蠍座のオープニングは『スモーク』と『ブロードウェイと銃弾』の二本立てでした。
あるのが普通な感覚だったので、なくなったという知らせには驚いた。
映画入場料について館主の田中次郎氏が書いた文「金銭感覚の足りない人が映画を見る?」を思い出した。蠍座オープン前の須貝ビル地下劇場のタイムテーブルに載っていたもので、1990年代半ばのものだ。
日本の映画入場料はほぼ世界一高いが、業界には「決して高くない」という意見もある。『ジュラシック・パーク』は2,000円取ったが歴代二位の興行収入をあげた、値上げしてもそのたびに客からクレームが来たという話は聞かない等、これらの意見が多数派を形成している以上、日本では映画入場料が下がることは絶対にない。だから、全体としての劇場入場者が増加することは絶対にない。すなわち、映画産業の未来はまったくもって、明るくなりようがない。それでも映画館を作るなんて、かっこよすぎる。
「この景気後退の時代、映画館でロードショーなんか見る人たちは、映画がその人の生活の一部と化している余程のファンか、さもなくば、経済観念のまるっきりない人のうち、どちらかだ」そういう辛辣な意見を聞いたことがあった。私は、笑って聞き流せなかった。料金をないがしろにすることで、手痛いシッペ返しを食う業界が、今や増えつつあるのだから。
私は払った金額の分だけ楽しめる確率がかなり低いことに気づいてしまって以来、めっきり映画館には行かなくなった。多分、今でも探せばいい映画、面白い映画はあるのだろうと思うが、それに当たるにはたくさん観てたくさんハズレを引かなければならない。金と時間があり余っていなければ、できることではない。試写室でタダで映画を観ている奴らの云うことは信用できない。自分でハズレを引かなければならないが、ハズレを引く余裕はもうない。
シネコン以外の映画館はもう思い出の中にしかない。これからも映画はDVDで見ていこう。今月パソコンを買い替え、映像を見る環境はよくなった。