『チャーリング・クロス街84番地』 ニューヨークの古本好きとロンドンの古書店 二十年にわたる文通

84 Charing Cross Road Quad

『チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本』ヘレーン・ハンフ 中公文庫)の存在は知っていたが「書物を愛する人」というのがわざとらしく感じ、手に取るまでには至らず、読んでいない。これが映画化されていると知り、どんなものか見てみた。

女性作家がニューヨークで英国文学を探しても扱っていなかったり高かったりしてなかなか手に入らず、ロンドンの古書店に欲しい本のリストを送ったことから始まる、二十年にわたるパワフルなアメリカ女と着実に仕事をこなす英国紳士の交流が描かれている。

特に大きな出来事があるわけではなく、ニューヨークとロンドンの街並みやアパート、古書店の落ち着いた映像で淡々と進み、手紙のナレーションが入る。ロンドンの古書店は格式の高い雰囲気なのだが、高い本ばかりあつかっているわけではないようなのだ。女性作家の皮肉な言葉や、気に入らない商品のときははっきりそう云ったり、抜粋ではなく完全版が欲しいと云ったり、段々面白くなってくる。

基本的にほのぼのした映画だが、ちょっと寂しさをほのめかすところや、切なさの残る結末など、とてもいい。女性作家の隣人や古書店のスタッフたちや家族の描写もいい。映画好きには『ニュー・シネマ・パラダイス』ジュゼッペ・トルナトーレ監督 1988)があるように、古本好きには『チャーリング・クロス街84番地』デヴィッド・ジョーンズ監督 1986)と云ってよい。「書物を愛する人」でも「読書好き」でもなく、「古本好き」というところがポイントだ。気に入った。今度、原作を見つけたら買おう。

今はAmazonがあるから海外から本を取り寄せるのも、それほど難しくはない。待っている間も楽しいものだ。私には映画のような交流はないが、届けば海を渡ってきたのだなあと思うし、宛名の文字がいい味出していたり、メッセージが書いてあったりすると嬉しいものだ。

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