『ドリアン・グレイの肖像』(1945)

ドリアン・グレイの肖像 1945

新年一発目の映画鑑賞は何にしようか決めていなかったが、先ほど記事「フランスの画家が描いたドリアン・グレイの肖像」を書いたので、『ドリアン・グレイの肖像』アルバート・リューイン監督 1945)にした。

ヘンリー卿は画家バジルのアトリエへ向かう馬車の中でボードレール『悪の華』を読んでいる。猫の置物がエジプトの神で、ドリアンの願いを叶えたという設定になっている。ドリアンを正しい道へ戻そうとするバジルは仏教の影響を受けている。原作では劇場の女優だったシビルは居酒屋の歌手になっている。音のある映像なので、この改変は悪くない。

ドリアンがシビルを誘惑するシーンは緊張感があってよかった。そこでドリアンは詩を読むが、その詩がなんとオスカー・ワイルドの詩というのが面白い。ただ、ドリアンが女優としてのシビル・ヴェインを崇拝して、シビルが現実の恋を知って演技ができなくなるとドリアンは幻滅するという原作の要素がない。ここは特に好きな部分なのだが、2009年の映画でもなくなっていた。この映画ではただ棄てるだけになっている。

2009年版にはヘンリー卿の娘が出てきたが、1945年版ではバジルの姪がドリアンと結婚したがる。その姪に恋慕する男がいて、この人物がドリアンの秘密を暴くカギになる。

衣裳や室内の調度品が豪華で、外は霧のロンドンの雰囲気が出ていて、人物の顔の陰影が美しいモノクロ映画だ。肖像画のアップだけカラーになる。気になって調べてみたところ、撮影のハリー・ストラドリングはこの映画でアカデミー撮影賞モノクロ部門を受賞している。『マイ・フェア・レディ』ジョージ・キューカー監督 1964)ではカラー部門を受賞、他ノミネート多数、聞いたことある映画を多数撮影している。

以前に見たときはナレーションが多いのとドリアン役がイメージと違うので、それほどいいと思わなかったが、改めて見てみると思ったよりよかった。

《関連記事》
『艶容萬年若衆』 三上於菟吉 和製ドリアン・グレイの肖像
「楕円形の肖像」(ポオ)は『ドリアン・グレイの肖像』のルーツか?
『ドリアン・グレイ 美しき肖像』 スウィンギン・ロンドンでデカダンでエロス
『オスカー・ワイルド』(1997) 真面目か頽廃か ワイルドの伝記映画
『ドリアン・グレイ』(2009) ワイルドの原作に忠実な雰囲気と大胆な改変
オスカー・ワイルド全部入りで音声付で0円
フランスの画家が描いたドリアン・グレイの肖像
「アーサー・サヴィル卿の犯罪」 オスカー・ワイルド 手相占いを本気で信じてしまって殺人者に
『肉体と幻想』幻聴幻覚、占い、夢に翻弄される人々

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。