19世紀アメリカの蒸気人間

蒸気人間 スチーム・マン

私は過去の記事「『海底二万里』 ジュール・ヴェルヌ」に、「(新潮文庫の)帯には「スチームパンクの祖」の文字が。すべて電気仕掛けと書いてあるでしょう。蒸気(スチーム)ではない」と書いたが、これぞスチームというのがエドワード・S・エリスの蒸気人間(スチーム・マン)だ。19世紀アメリカで流行したダイム・ノヴェルの中でも人気のあった発明小説のひとつだ。『ロボット・オペラ』瀬名秀明・編著 光文社)に記述があり、興味を持った。読んでみたいが、日本語訳はないようだ。

The Huge Hunter; Or, The Steam Man of the Prairies by Edward Sylvester Ellis

ジョニー・ブレイナードというドワーフが身長10フィートの蒸気人間を作る物語だ。1865年に掲載され、再版されるうちに人気を博してくる。

1875年、ライバル会社が別の作家で続編を出した。フランク・リードというエジソンに似た発明家が蒸気人間マークⅡを開発したという設定だ。その作家はトラブルのため降板した。

さらに続きを書いたのがマーク・セナレンズだ。1879から23年にわたり、184編ものフランク・リード小説を書き続けた。フランク・リードの息子が蒸気人間マークⅢを発明、1885年には電気人間(エレクトリック・マン)に改良した。そして自作のハイテク飛行船で各国をめぐる冒険譚となっている。

『ロボット・オペラ』によれば、ジュール・ヴェルヌは明らかにフランク・リードを意識していて、セナレンズに手紙を送っているそうだ。セナレンズが電気人間を書く15年前には電気潜水艦を書いていたことになる。

私は現物を確認していないが、『異相の時空間―アメリカ文学とユートピア』(英宝社)に「金メッキ時代のスチーム・パンク——エドワード・S・エリスの『巨大なハンターあるいはプレーリーの蒸気人間』を読む」が収録されているらしい。

蒸気人間の元ネタについても書いてあり、全部興味深い。
文学と科学のインタフェイス — 風間 賢二 — 季刊 環境情報誌 ネイチャーインタフェイス

フランク・リード小説について詳しく書いてある論文
SF ダイムノヴェル―テクノロジー,冒険,帝国主義   山口 ヨシ子

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