歌劇『ファウスト』シャルル・グノー 全5幕 パリ・オペラ座 1975

私がシャルル・グノーのオペラ『ファウスト』を知ったきっかけはドラマ『オペラ座の怪人』だった。最後の方の桟敷席のファントムと舞台上のクリスティーヌが歌うシーンが素晴らしく、感動した。『ファウスト』は原作にも出てくる。このドラマは宝塚でもたびたび上演されるミュージカル『ファントム』の元になったものだ。

最近、『未来のイヴ』ヴィリエ・ド・リラダン 高野優 訳 光文社古典新訳文庫)を読んでいたら、こちらにもエジソンの友人が毒婦と出会うところにグノー『ファウスト』が出てきた。このオペラのDVDを持っており、連休で時間があったので久しぶりに見てみた。

1975年のパリ・オペラ座公演で、これは中野区図書館にVHSがあり、ずっと前に借りて見たことがあった。メフィストフェレス役がスマートでかっこよいのでまた見たいと思っていた。一時期、廉価版DVDが出ていたことがあったが、品切れになってからは高値になり、数年前にやや値段が下がった頃に買って置いてあった。DVDには特に記載はないが、VHSはたしか「歌える字幕」となっていた。字幕を見ていると歌いたくなる。

この公演は裏方、大道具係と小道具係の長期間のストライキにより、他のオペラの舞台装置を転用していて、全体的にシックな雰囲気だ。解説によれば1855年パリ万国博覧会会場のドームがメインステージになっていて、当時の風俗が織り込まれているという。だから衣裳は中世風ではなく、ファウストとメフィストフェレスは粋でダンディなタキシードにシルクハットでステッキを持っているのだ。ガウンとかボアの付いたロングコート等かっこよい。

楽しい歌、美しい歌が多いが、私は冒頭の老ファウストがメフィストフェレスを呼び出し、若者に変身して、これから出かけるぞーというところが何度見てもワクワクする。

劇的でロマンティックでいいねー。最後の悲劇的なところで出会いの場面を思い出させる音楽が流れるの切ないんだよ。原作も読みたくなった。何種類か持っているんだけど地震で下の方に埋もれている。

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