私は本当は自分の好きな文化的なことだけを書いていたい。だが、そうも云っていられない。この2006年7月に出た本の内容に現実が近づいている今こそ、多くの人に読んでほしい。
『誇りを持って戦争から逃げろ!』(中山治 ちくま新書)はタイトルだけ見ると左翼の本なのではないかと思うかもしれないが、そうではない。戦争をできる国になるとはどういうことか、「軍部の論理」と「民間の論理」の違い、過去の戦争と核、毒ガスなど現代兵器を使った戦争の違い、軍事、外交などから戦略的にリアリズムで書いてある。その結果の「逃げろ!」なのだ。
右翼の「日本人の誇り」、「武士道精神」、「大和魂」、左翼の「戦争はいけない」、「反戦平和」、「人道主義」というお題目はどちらも役に立たないという。中山治は「武装中立」を主張している。
大雑把に云うと、武器屋が金儲けするためにわざわざ争いの種をまいているのだ。知っている人は知っているが、学校で習わないので若い人は知らないだろう。その若者を騙そうとする輩がいるから気をつけなければならない。
《追記》
「攻撃は最大の防御」というが、これは誤訳で、本当は「防御は最大の攻撃」だ。攻め進めば進むほど、補給は困難になり、不利になる。中国すら支配できないのに、「世界中で活動」というのがいかに馬鹿げていることか。戦争などするべきではないが、仮に本気で戦争に備えるとして、日本人を見殺しにし、シェルターを造るなどの防衛に金をかけずに無駄遣いばかりするような男がトップでは駄目でしょう。(2015年7月16日)