『機械探偵クリク・ロボット』 フランスのナンセンス・ミステリ

機械探偵クリク・ロボット

著者本人のヘタウマな挿絵が入っている『機械探偵クリク・ロボット』カミ ハヤカワ・ミステリ)には、五つの館がある広い庭園が舞台の殺人事件、盗難事件、意外な犯人の「五つの館の謎」(1945)と、パンテオンから偉人たちの遺骸が盗まれ、犯人が身代金を要求してくる「パンテオンの誘拐事件」(1947)の二篇が収録されている。二篇しかないそうだ。

くだらないと云えばかなりくだらないのだが、ひねりのある終わり方だ。フランス語には同音異義語が多く、この小説には駄洒落が多いのだが、その日本語訳も面白い。くっだらねーと思いつつも笑ってしまう。

刑事が事件の捜査をしていると、機械仕掛けで二足歩行し、驚くべき推理能力を発揮するクリク・ロボットとそれを作ったジュール・アルキメデス博士が現れる。博士は古代ギリシアの発明家アルキメデスの子孫で、「その目には異様な光が輝き、その光が持つ不可思議で悪魔的な雰囲気は、ホフマンの小説に出てくるような怪しげな博士を思わせた」と描写されている。

フランスの泥棒は単に金が欲しいというのではなく、ユーモア、反権力がある。

著者カミについて
ピエール・カミを読む

初心者のためのカミ入門 第1回(その1)(執筆者ピエール・アンリ・カミ・高野優) – 翻訳ミステリー大賞シンジケート
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