『ヤング・フランケンシュタイン』と30~40年代の歌と踊り

ヤング・フランケンシュタイン メル・ブルックス young-frankenstein

メル・ブルックス監督、ジーン・ワイルダー主演の『ヤング・フランケンシュタイン』(1974)は派手なことをやっている訳ではないのに、どこか可笑しい。しょうもないオチでくだらないが、メイキングを見ると脚本、美術、撮影にはかなり力が入っていることが分かる。

元はジーン・ワイルダーの企画、脚本で、途中からメル・ブルックスが参加した。メル・ブルックスは脚本の骨組みを重視した。いったん書き上げたあとに柱の部分を思い切り叩いて、倒れるようなら書き直しするのが脚本を練る秘訣で、何度も試写会を行い、修正したらしい。美術や撮影は笑いに頼らず、パロディの元ネタに近づけることによって笑いを引き出す。小道具やセットは『フランケンシュタイン』(1931)のものだそうだ。

ジーン・ワイルダーはフランケンシュタイン・シリーズに感銘を受けたそうで、自分のやりたいことをやっているせいか、いきいきしている。徐々にマッド・サイエンティストになっていく感じ、冷静さを保とうとしながらも感情がほとばしり出てくる感じがよい。

”Putting on the Ritz”色々

私が一番好きなシーンはフランケンシュタインが劇場でモンスターを披露するところだ。ミュージカル・ナンバーで歌い踊り、モンスターがうめき声をあげるところは何度見ても笑ってしまう。このシーンは監督に反対されたのだが、ジーン・ワイルダーが粘り強く主張して認められたらしい。カットされなくてよかった。全体的に1930年代風を意識した映画だが、ここは明らかに30年代風となっている。

”Putting on the Ritz”アーヴィング・バーリンの曲で、1930年に同名の映画が作られた。背景のアールデコな感じや人海戦術が豪華でよい。

こちらはクラーク・ゲイブルがかっこよい”Idiot’s Delight”(1939)

こちらはフレッド・アステアがかっこよい”Blue Skies”(1946)

驚異の身体能力 ニコラス・ブラザーズ

メル・ブルックス監督の音声解説によると、フランケンシュタインとモンスターのダンスはニコラス・ブラザーズやスレート・ブラザーズを意識したとのことだ。スレート・ブラザーズについては調べても詳細が分からなかったが、ニコラス・ブラザーズの動画はあった。アクロバティックなタップダンスで、凄いダンスは小さな画面のネット動画で見ても凄いことが解る。

フランシス・フォード・コッポラ監督の『コットンクラブ』にも黒人兄弟タップダンサーが出ていたので何か関係あるかと思ったら、ニコラス・ブラザーズは1930年代にコットン・クラブに出演していたらしい。

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