『オペラ座の怪人』(1962) ハマー・フィルムのスパルタ・ファントム

オペラ座の怪人 ハマー・フィルム 1962 hammer_phantom

最近、『オペラ座の怪人』(1925)の彩色版『オペラの怪人』(1943)と順番に見たのは、ハマー・フィルム版のDVDを見る前の復習だった。ハマー・フィルム版は見たかったがレンタルになかなかなく、最近買ってあった。監督が『吸血鬼ドラキュラ』『フランケンシュタインの逆襲』テレンス・フィッシャーなので、是非見たいと思っていた。舞台はロンドンになっている。豪華なオペラ座というよりは雑然とした劇場だ。音や映像が怪奇映画そのものなのだが、最後まで見ると意外にも感動した。

怪人の隠れ家には古色蒼然としたアンティークがゴロゴロしていて素晴らしく、オルガン弾きまくりで嬉しかった。ジョエル・シュマッカー版(2004)も好きだが、ファントムが帽子かぶらないのとオルガンを弾かないのが不満だった。帽子なら『オペラの怪人』(1943)、オルガンなら『オペラ座の怪人』(1962)だ。

ファントム以上に怪しい人物らがうろちょろしていて、ファントム以上に下劣であくどいダーシー卿というのがいる。ファントムになるのはダーシー卿に曲を盗用されたピートリー教授で、狂人でも悪人でもない。

クリスティーンが美人だったらもっとよかったのにと思ったが、見続けていると納得した。ファントムとクリスティーンのロマンスはない。それどころか、レッスン中にクリスティーンが弱音を吐いたら往復ビンタするくらいスパルタだ。自分の音楽を完成させるために執念を燃やしているところがよい。色恋沙汰などというものは普通の人間レベルのものだ。完成したオペラを見るファントムの眼(顔全体が隠れた仮面で片眼しか見えない)の映像に感動した。

ヒーロー役はスタッフから信頼されている劇場支配人で、ただの金持ちではないところがよい。イギリス紳士らしくステッキを持っているところもよい。ファントムとは敵対関係ではなく、曲を盗まれた音楽家であることを理解する。これより古い映画にも新しい映画にもない要素でよかった。

ファントムが狂人でも悪人でもないのにどうやってシャンデリアが落ちるのか、ライバルがいないのにファントムはどうやって死ぬのか、それは見てのお楽しみ。

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