『優雅な生活が最高の復讐である』(カルヴィン・トムキンズ 新潮文庫)にコール・ポーターの名前がよく出てきて、この時代の音楽に興味あったので、伝記映画『五線譜のラブレター』(2004)を見た。すると、登場人物にジェラルド・マーフィーもいた。『優雅な生活が最高の復讐である』を読んでいなかったら、どのような人物なのか解らなかっただろう。ミュージカルは好きなので前から気になっていたが、いいタイミングで見た。
映画では描かれていないが、この本にはコール・ポーターとジェラルド・マーフィーの学生時代の出会いや、ブロードウェイで成功する前にスウェーデン・バレエ団のバレエを作曲したことについて書いてある。
老境のポーターが、謎の男(最後まで見れば正体が分かる)が演出する舞台を観ながら人生を回想するという、演劇のような変わった形式の映画だった。コール・ポーター自身、単純ではない人物なので、合っているのかもしれない。
いわゆる普通のミュージカルとも違っているが、監督は「三十曲も歌っているのだからミュージカル映画だ」と云っているのでミュージカル映画なのだろう。派手さはないが上品な映画だ。
もっとオーソドックスな伝記映画『夜も昼も』(1946)もある。監督は『カサブランカ』のマイケル・カーティス。こちらの方が好みのはずなのだが、クセのある『五線譜のラブレター』も捨てがたい。コール・ポーター役はケイリー・グラント。妻の役のアレクシス・スミスが見覚えのある顔だと思ったら、ジョージ・ガーシュウィンの伝記映画『アメリカ交響楽』にも出ていた。かなり美しい。
全然関係ないけど、『ミッドナイト・イン・パリ』のコール・ポーター役の人、髪が薄くて顔が長いので最初ジョージ・ガーシュウィンかと思った。でもコール・ポーターの歌を歌っているし、と不思議に思ったものだ。