フランスの小説や映画に興味惹かれ、漠然と憧れはあったが、具体的な予定はなかった。だが、もっと貯金してからとか、もっと言葉を勉強してからと思っていたらいつまでたっても行かないような気がして、ある日、思い立った。心のよりどころとなったのは『昭和幻燈館』(久世光彦 中公文庫)の一節だ。
十年以上も昔の話になるが、パリへ一人で行ったことがある。フランス語など喋れるわけではないが、その気になれば案内書片手に結構気楽にあちこち歩けるもので、(以下略)
え? そんなんでいいの?と思った。実際そんな感じだった。フランス語をしゃべれなくても、欲しいものをメモに書いて「ヴザヴェ・サ?(これある?)」と聞けばよいのだ。一冊の本との出逢いがなければ、多分行かなかっただろう。
蚤の市で、思いがけずに手彩色のポストカードとめぐり合ったのも何かの縁か。『昭和幻燈館』には彩色写真についての章がある。
出発の2週間ほど前に、西荻の古本屋で『パリノルール』を見つけ、買った。かなりの情報量だ。もし古本趣味がなかったら知らないままだったかもしれない。この本を知らなければ知らないままだったであろうことがたくさんある。
上の写真は、塀と壁だけだがいかにもパリだなと思って撮った。