パンについて調べるとかなり古くからの歴史があり、バッカスの従者サテュロスとともにファウヌスと同一視されたりしていて単純ではないが、淫欲の象徴である点は大抵の本に書いてある。体の一部が動物、例えば鳥とか魚の人間が性的な要素を持つ例はある。多産のイメージから来たものだろう。
パンの角や偶蹄類の脚がサタンのイメージの元になっているので、『悪魔の履歴書』(ピーター・スタンフォード 原書房)に何かパンについての記述がないか探してみたところ、あった。ヘルメスの息子のパンは性的欲望の神で、この欲望はギリシア人にとって創造的であると同時に破壊的なものであった。5世紀にアウグスティヌスの大きな影響のもとにキリスト教が性にかかわるすべてのものを悪もしくは悪魔的なものとして貶めはじめたとき、悪魔の図像的な表現を角が生え毛むくじゃらで獣性むきだしのパンの姿に託した。
パーン (ギリシア神話) – Wikipedia
サテュロス – Wikipedia
パンの絵を色々探した。ヴィジュアル的にはほとんど変わらないのでサテュロス,ファウヌスも混ざっている。探せばまだまだあり、きりがない。昔は直接的にエロティックな表現ができないから宗教や神話のテーマで描いたらしいが、かなり露骨に猥褻だ。何かが起こりそうな感じがよい。こういう人が現れると現代では変態と呼ばれるが、これが人間本来の姿なのだ。バーン=ジョーンズの絵が気に入った。
Antonio Allegri Corregio “Venus, Satyr and Cupid” (1528)
Hans von Aachen “Venus,Cupid and a Satyr” (1598)
Peter Paul Rubens “Pan and Syrinx”(1617-19)
Nicolas Poussin “Pan and Syrinx” (1637)
Francesco Mancini “Amor and Pan”(1723-1725)
Alexandre Cabanel “Nymph and Satyr” (1860)
William Adolphe Bouguereau “Nymphs and Satyr” (1873)
Edward Burne-Jones “Pan And Psyche” (1872–74)
Arnold Böcklin “Spring Evening” (1879)
Felicien Rops “Homage to Pan”(1886)
George Percy Jacomb-Hood “Pan and the Nymph” (1896)