パリの怪盗ファントマ三部作 危機脱出 電光石火 ミサイル作戦

ファントマ 危機脱出 電光石火 ミサイル作戦

私は007は全部見ているというほどのマニアではないが、半分以上は見ている程度の愛好者だ。『スペクター』の予習復習に『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』『スカイフォール』と見ていたらスパイつながりでオースティン・パワーズも見たくなり三部作とも見て、そこから1960年代スパイ映画、ジェームズ・コバーン『電撃フリント』シリーズ、ディーン・マーティン『サイレンサー』シリーズ、その周辺の近いジャンルである泥棒映画にも興味が行き、『唇からナイフ』『黄金の眼』『ミニミニ大作戦』など見た。そして、例年、正月は時間に余裕があるせいか長い映画を見たくなるが、今年は『ファントマ 危機脱出』(1964)、『ファントマ 電光石火』(1965)、『ファントマ ミサイル作戦』(1967)を全部見るという企画にした。

60年代のスパイ映画ブームは『007は殺しの番号(ドクター・ノオ)』(1962)のヒットから始まったが、スパイほどの流行ではなかったにしてもよく目につくジャンルに泥棒映画がある。スパイ映画の悪役や泥棒映画の泥棒の胡散臭さ、秘密基地、秘密兵器、カー・チェイス、変装があり、ユルい雰囲気、音楽、ファッションなどに同時代性があるのだろう。そして、面白い物語には「秘密」という要素があるものだ。スパイにも泥棒にも勿論ある。

”FANTOMAS”は1911年から1963年まで、フランスで発表された犯罪小説だ。フランス語は基本的に最後の子音は発音しないが、発音する単語もいくつかはあり、”FANTOMAS”も映画を見ると「ファントマス」と聞こえる。これは想像だが、変装していくつもの顔を持っているから複数形なのかなと思った。

三部作とも、変装術で変幻自在の怪盗ファントマが悪事を企て、新聞記者のファンドール(ジャン・マレー)、その恋人で写真家のエレーヌ(ミレーヌ・ドモンジョ)、ジューヴ警部(ルイ・ド・フュネス)らがファントマを追うが、ファントマは逃げおおせるというパターンだ。ファントマの最後の乗り物が大がかりで見ものだ。一作目はパリ、二作目はローマ、三作目はスコットランドが舞台になっている。

ファントマ映画祭2006のパンフレットによると、ジューヴ警部は『ルパン三世』の銭形警部のモデルになった可能性も感じさせるとのことだ。ジューヴ警部はエネルギッシュでいつも喚いているが間抜けな役どころで非常に面白く、その相棒の肥っちょでとぼけた味のベルトランとのやりとりが笑える。ファントマやファンドールよりも目立っている。

二作目の『ファントマ 電光石火』でジューヴ警部は、これからはスパイとガジェットの時代だと云い、妙な秘密道具を出してくる。単にスパイ映画ブームに便乗しているように見えるが、そう単純でもないようなのだ。フランスにはOSS117(サンディセット)というスパイもののシリーズがあり、原作の小説も映画化も007より先で、そのシリーズの半分以上がファントマ・シリーズと同じくアンドレ・ユヌベルが監督している。OSS117はリメイクされたものはあるが、旧シリーズは残念ながらDVD化されていない。是非見てみたいものだ。

『ファントマ 危機脱出』(1964)
ファントマが宝石泥棒し、追跡劇の末、潜水艦で逃げる。犯罪は単純なもので、チェイスが激しい。

『ファントマ 電光石火』(1965)
ファントマがテレパシーで人を操る光線の出る銃を開発するため、その技術を持った博士を誘拐しようとする。ファンドールは博士に変装しておとりになり、ファントマも博士に変装し、本物の博士も現れ・・・・・・ 追跡劇の末、ファントマは空飛ぶ飛行機で逃げる。

『ファントマ ミサイル作戦』(1967)
ファントマが動植物の繁殖を止めて食糧難を引き起こす兵器で脅迫し、世界中の富豪に金を要求する。スコットランドのラシュレー卿はこれに反旗を翻すが、敵は身内にもいた。追跡劇の末、ファントマはロケットで脱出するが・・・・・・ 過去の記事「『オペラ座の怪人』 原作小説 翻訳各種 どれがいい?」に書いた「幽霊を信じるイギリス人と信じないフランス人」が描かれている。

ファントマ・シリーズのDVDの値段がすごいことになっているが、レンタルで探せばあるはず。

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