外国の古い小説を読んでいると入れ子構造になっていることがよくあり、『悪魔のような女たち』(バルベー・ドールヴィイ ちくま文庫)もそうなのだが、メインではない外側の語りまで華麗だ。長めの短篇が六篇で、まだ読んでいる途中なのだが、華美な比喩も邪魔にならずすらすら読め、ニヤニヤと笑えて、読み終わりたくない。
著者について調べていて気づいたが、数年前と最近にも翻訳がでているのだ。あまり本を買いたくないのだが、油断すると品切れになりそうだ。
普段はあらすじだけ他から引用ということはしないのだが、あらすじだけで物凄く面白そうなので、引用する。
悪魔のような女たち (ちくま文庫)
若い陸軍士官と高貴玲瓏たる美女アルベルトの秘密の逢瀬をまつ戦慄の結末、パリの〈植物園〉の檻の前で、獰猛な豹の鼻面をぴしりと黒手袋で打つ黒衣の女剣士オートクレールの凄絶な半生、みずから娼婦となってスペインの大貴族の夫に復讐を図る麗しき貴婦人シエラ=レオネ公爵夫人…。華麗なバロック的文体で描かれた六篇の数奇な物語を、魅力あふれる新訳でおくる。
デ・トゥーシュの騎士 (ちくま文庫)
1800年頃のノルマンディ、王党派の騎士デ・トゥーシュは、共和軍の手におちて塔に幽閉される。救出のため、12人の勇敢な戦士たちが死地へと赴いた。その中に、絶世の美女と謳われたエメ・ド・スパンスの婚約者がいたが、壮烈な死を遂げる。北の地での凄絶な戦闘と、年を経て今は聴覚を失った悲劇のヒロイン・エメをめぐる驚くべき秘密を、世紀末デカダンス美学の光芒を放つ華麗な文体で描く。
亡びざるもの(国書刊行会)
神々しいまでの美青年アラン、スキュドモール伯爵夫人、その娘カミーユ―わずか三人の登場人物が暗鬱なノルマンディの古城に繰り広げる、極限の愛と愛の不可能性の物語。オスカー・ワイルドが英訳を手掛けたデカダン派巨匠の禁断の長篇小説。