『さかしま』(ユイスマンス)の第四章に出てくる亀の甲羅に黄金の鎧を着せ、宝石を象眼するという狂ったエピソードを最初に読んだときは、何となくリクガメを想像していた。だが、原書のペーパーバックの表紙にはウミガメが描かれている。原書ではtortueだ。英語では陸・淡水のカメはtortoise、ウミガメはturtleと分かりやすいのだが、フランス語ではカメはtortue、ウミガメはtortue marineと、特に区別はないようだ。
ヒントになるのは盾に例えられていることだ。リクガメだとこんもりと盛り上がりすぎていて、ウミガメの方が盾に近い。これはウミガメで決定だなと思った。
ところが、検索していて上の絵を見つけた。1931年のArthur Zaidenbergの挿絵だ。リクガメが描かれている。だがこれはアメリカ人の解釈なのだ。やはりフランス版の表紙のウミガメだろうか。あんな結末になるのはウミガメっぽいが、さて、どちらだろう。