どこにもない場所で今はもうない建物の絵はがきを手に入れた話

夕暮れ時、神戸のアンティーク アナスタシアへ行った。

時計宝飾品商 アンティーク アナスタシア

Webサイトに当店は別の世界にあるので、いくら探しても見つかりませんと書いてある。そういうところへ向かうのはワクワクする。場所が分かりそうな写真を載せるわけにはいかないので、帰り道に撮った細い階段の写真を載せておこう。北野の坂道を登っていくと、見たこともないような風景があった。

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一番見たかったのは腕時計で、色々見せていただき、記事「神戸のアンティーク アナスタシアの商品説明が単なる説明のレベルを超えていて凄すぎる」にリンクを貼ったご先祖様とも対面してきた。

腕時計、懐中時計を一通り見て、一段落したとろで、ふと、絵はがきはないか尋ねてみた。改めてWebサイトを見ても絵はがきについて書かれていないが、なんとなくありそうな雰囲気だったのだ。どんな絵はがきか聞かれたので、手彩色のと答えた。

別の部屋に案内され、絵はがきやその他版画や広告など、紙もののファイルを見せていただいた。とある一葉に目が留まり、思わず「これ●●●●●ですか?」と言葉が漏れた。ご主人は「なんで分かったんですか?」と驚いていた。「いや、ちょっと興味あって」と答えた。

しばらく他のも見ていたが、やはり先ほどの、今はもうない建物の絵はがきが気になっていた。構図も色もすごく綺麗なのだ。値段を聞いてしばらく迷ったが、この場所でこの絵はがきと出会ったことに何かの縁を感じ、結果的にはゆずってもらった。

「買う」よりはゆずってもらったという表現がふさわしい。ご主人の秘蔵だったらしく、「とうとうお嫁に行ってしまうか」、「こんな展開になるとは思わなかった」と、売りたくないような雰囲気だった。全然興味ない人からすれば、紙切れ一枚にその値段? というような値段ではある。色々見たり説明してもらったりしたので、そのお代も含めてと考えれば、納得できる。

秘密の場所で手に入れたものなので、何の絵はがきなのかは秘密にしておこう。ご主人いわく、他で見たことのない珍しいものなのでネットに公開したら市役所に寄付しろと云われるかもしれないとのこと。笑いながら冗談半分ではあったが。

私がその建物を知ったのは、稲垣足穂の小説でだった。

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