『歴史は夜作られる』ロマンスありサスペンスありユーモアあり タイタニックを思わせる船の遭難スペクタクル

少し前の記事「映画は宝探し まだまだ未知の世界が」に映像ソフトを買いすぎたと書いた。そのとき買ったDVDが『真説フランケンシュタイン 北極に消えた怪奇人間』、9枚組『フランケンシュタイン vs 狼男』『歴史は夜作られる』で、その他VHS数本だった。『歴史は夜作られる』は書籍『豪華客船物語』松井邦雄 六興出版)で知り、すごくかっこいいタイトルなので気になっていたが見る機会のない映画だった。これが2月にDVD化され、値段が下がっていたので買っておいた。

この映画は最近凝っているフランケンシュタインへの興味とは関係ないと思っていた。ところがなんと、『妖魔の宴 フランケンシュタイン編2』菊地秀行監修 竹書房文庫)収録の「我がフランケンシュタイン映画史 後編」(菊地秀行)を読んでいたら、『フランケンシュタイン』ジェームズ・ホエール監督 1931)でフランケンシュタイン役だったコリン・クライヴ『歴史は夜作られる』に出演しているとの記載があるではないか。何たる因縁!

歴史は夜作られる

『歴史は夜作られる』フランク・ボーザージ監督 1937)は『グランド・ホテル』エドマンド・グールディング監督 1932)や『カサブランカ』マイケル・カーティス監督 1942)を思わせるところのある、まさにクラシカルなメロドラマだ。多分、『タイタニック』ジェームズ・キャメロン監督 1997)にも影響を与えていると思う。会話が直接的ではなく裏の意味のある言葉が使われるところなど面白い。シャルル・ボワイエの台詞もファッションも粋でかっこいいんだよね。

アメリカの海運王ブルース・ヴェイル(コリン・クライヴ)は妻アイリーン(ジーン・アーサー)に対し異常な嫉妬心を持つ男で、アイリーンはそれに耐えられず離婚しようとしている。妻の浮気を疑ったヴェイルは罠にかけるため運転手をアイリーンの部屋に送り込み誘惑させて、そこに踏み込むという計画を立てた。アイリーンと運転手がもみ合っていると、謎の男ポール(シャルル・ボワイエ)窓から入ってきて運転手を殴って気絶させる。ヴェイルが踏み込んできたが、ポールはアイリーンの立場が悪くならないように気遣い、宝石泥棒のふりをしてアイリーンを連れ出すのだった。単に嫉妬深いだけではなく冷酷な男ブルース・ヴェイルは運転手を殺してポールに罪を着せようとする。ポールとアイリーンはどうなってしまうのか?

パリで一夜のデート、別れ、ニューヨークでの再会、豪華客船での逃避行と、見ていて飽きない。船は沈没してしまうのか、ポールとアイリーンの生死は・・・・・・それは見てのお楽しみ。ポールは実はレストランの給仕頭で、料理長とのやりとりが笑いを誘う。見たいと思っていた映画なので見られてよかったし、とても気に入った。

『歴史は夜作られる』が作られたのはコリン・クライヴが飲酒が原因の肺結核で亡くなる数か月前だった。クライヴは生涯、飲酒癖とノイローゼに悩まされ、『歴史は夜作られる』の撮影中、興奮のあまりすすり泣きし、周囲の者は茫然と見つめていたという(参考文献:「我がフランケンシュタイン映画史 後編」(菊地秀行) 『妖魔の宴 フランケンシュタイン編2』菊地秀行監修 竹書房文庫)収録)。実際、映画を見て、精神不安定になってもおかしくない役だなとは思う。

コリン・クライヴ ジーン・アーサー

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