新潮文庫の『海底二万里』(ジュール・ヴェルヌ)の帯に「スチームパンクの祖」と書かれていることについて、記事「『海底二万里』 ジュール・ヴェルヌ」に「すべて電気仕掛けと書いてあるでしょう。蒸気(スチーム)ではない。スチームパンクのモデルのひとつではあるが、「スチームパンクの祖」は『悪魔の機械』 (K・W・ジーター ハヤカワ文庫)ですよ」と書いた。
光文社古典新訳文庫の『未来のイヴ』(ヴィリエ・ド・リラダン)の帯には「アンドロイドSFの祖」とある。文庫の帯は「祖」がお好きなのか。機械で造った、人間のように見えるアンドロイドという意味では間違ってはいない。だが、もっと遡れば『フランケンシュタイン』(メアリー・シェリー)まで行き着く。
『サイバネティックSFの誕生 ギリシャ神話から人工知能まで』(パトリシア・S・ウォリック ジャストシステム)にも『未来のイヴ』が載っていてもよさそうなものだが、載っていない。
この本の「フランケンシュタインとその十九世紀の後継者たち」という段に紹介されている作品をメモしておこう。
『フランケンシュタイン』メアリー・シェリー(1818/1831)
「メルツェルの将棋差し」エドガー・アラン・ポオ(1836)
「自動チェス人形」アンブローズ・ビアス(1894)
『エレホン』サミュエル・バトラー(1872)
帯の「Andréide 1.0」という書き方は『ガラテイア2.2』(リチャード・パワーズ みすず書房)を連想させる。こちらは人工知能の話で人型のアンドロイドが出てくるわけではない。読んだのはかなり前で、あまり覚えていないので、機会があれば再読したい。