『グランド・ホテル』の原作者ヴィッキー・バウムの『上海ホテル』なる小説があることは、オールド上海に凝っていた時期、記事「ウェルカム上海電影院 オールド上海が舞台の映画・ドラマ 古今東西」や「上海ブックフェア 遅れてきた上海ブーム」を書いていた頃に知った。当時は高値だったか出回っていなかったかで、手に入らなかった。
久しぶりに映画『グランド・ホテル』を見て、記事「『グランド・ホテル』 優雅なリアルタイム・アールデコ」に書いた、五年前に買ってあった原作を読み始めた。なにしろ分厚い本なので、まだ半分も行っていないが、人物の映画では描かれていない克明な心理、妄想、過去や人物同士の関係、エピソードが細かく描かれていて面白い。早く続きを読みたいという気分になる。
そして、ふと『上海ホテル』を思い出し、調べてみたところ手頃な値段ものを見つけた。私が買ったのは昭和十四年発行の改造社のものだ。文字を囲む蝶のモチーフの模様の部分がうっすらとピンクがかった、お洒落な表紙だ。1950年にも新人社から出ているが、こちらは第一部のみで第二部が出ていない。
コスモポリタンな雰囲気は『グランド・ホテル』にもある。そんな物語がオールド上海で繰り広げられるとは、考えただけでもワクワクする。『上海ホテル』をパラパラめくってみると中国人、西洋人、日本人が出てきて、イデオロギーや戦争が関わる重い内容のようだが、読むのが楽しみだ。