私は「”LE FANTôME DE L’OPÉRA” には想像力が必要」と書いた。これを過剰なまでに実践したのが『ファントム』(スーザン・ケイ 扶桑社文庫)だ。やっていることはパロディの同人誌と変わらない。ただし、膨大なリサーチと綿密な構成が伴い、原作への愛がある巨大建造物であることは認めなくてはならない。
Amazonレビューの高評価ほどに感銘を受けたわけではない。ツッコミどころはあるが、感動的な場面もいくつかある。
ガストン・ルルーの原作を読んでいると分かるところが多々ある。ミュージカルからの引用「奇術で指から火花」は特に嬉しかった。ドラマとミュージカルの影響で、ファントムは裏で音楽の仕事をしているから給料をもらっているのだと私は思っていたが、『ファントム』ではただの泥棒になっている。まあ、それもひとつの解釈ではある。
ファントムがクリスティーヌに惹かれたのは単に声がいいからだけではないところと、クリスティーヌの前に姿を現す前の迷いが描かれているところがよい。
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