『オペラ座の怪人』(1925)のモノクロで仮面舞踏会のところだけ赤い色が付いたバージョンがあるのは知っていたが、これは全体に一色付いていて、仮面舞踏会のところはフルカラーになっている。素晴らしい。
《追記》
全部通して見た。持っている500円DVDよりも画質がよい。音楽も合っている。じっくり見比べていないのでどこがカットされているか知らないが、YouTubeの方がDVDよりも二十分近く長い。見てよかった。また1925年版を見るならこちらにする。
画質がよいので劇場や怪人の隠れ家の内装がよく見える。仮面舞踏会と屋上のシーンがカラーになっている。派手さがより感じられる仮面舞踏会の後、屋上では夜の暗い青に怪人の赤いローブがはためく。今回初めて気づいたが、クリスティーヌとラウルが階段を登って逃げるシーンで、下の階を怪人が通って行くのだ。私はモノクロでは気づかなかった芸の細かさだ。
過去の記事「『悪魔スヴェンガリ』と原作『トリルビー』」に「『オペラ座の怪人』を、クリスティーヌが催眠術にかかっているようであまり好きではないという感想を見たことがあるが、意外と正しい解釈なのかもしれない」と書いたが、1925年版の映画では明らかに催眠術をかけている。
近年のロマンティックな解釈も私は嫌いではないし、ファントム・ラヴすぎる人たちは「クリスティーヌは本当にファントムを愛していたのよ」と思いたいかもしれないが、原作を読んだ感じでは逃げるために愛しているふりをしているようだ。グラン=ギニョルにも似たような話がある(『グラン=ギニョル傑作選 ベル・エポックの恐怖演劇』(真野倫平 編・訳 水声社)収録の「怪物を作る男」)。
(2014年4月28日)