「楕円形の肖像」(ポオ)は『ドリアン・グレイの肖像』のルーツか?

私はエドガー・アラン・ポオの熱心な読者とは云えない。だが、幅広い分野において私の好みの作品に影響を与えているので、読まないわけにいくまい。

「楕円形の肖像」( ポオ 1842)が『ドリアン・グレイの肖像』オスカー・ワイルド 1890)の母親ではないか、と『一九三四年冬━乱歩』久世光彦)にある。小説の中の人物が思っているだけなので証拠はないが、ありそうなことではある。

「楕円形の肖像」では、画家が若く美しい妻の肖像画を描く。その画家は「すでに自らの芸術の中に花嫁をもっていた」、つまり、あっちの世界にイッちゃっていて生身の人間よりも芸術が大事なのだ。機械とか人形は出てこないが、「独身者」と云えるだろう。絵が完成に近づくにしたがって妻は衰弱していくが、画家はそんなことお構いなし。完成したときに妻はこと切れる。 『ドリアン・グレイの肖像』とは、絵が変化するとモデルも変化するところが似ている。

その肖像画は肩から上の部分だけを描いてぼかしてあるビネットと呼ばれるもので、アメリカの画家トマス・サリー(Thomas Sully 1783–1872)好みのスタイルで描かれていたと文中にある。この絵がモデルというわけではないが、おそらくこのような感じだろうか。

Portrait of Louisa Pope (1845)“Portrait of Louisa Pope Miller”(1845)

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