子供の頃に『おじさんのかさ』(さのようこ)が好きだったのは覚えているが、どんな話だったかは忘れてしまったので、図書館で借りて読んでみた。
昔、好きだった理由は思い出せないが、おそらく雨が降っても傘をささない描写が続くのが面白かったのだろう。絵を真似て描いていた記憶がある。
すこしくらいのあめは、ぬれたまま あるきました。
かさが ぬれるからです。
このおじさんは帽子をかぶっている。帽子をかぶっているときに傘をささないのはマナーとしては普通のことで、おじさんのしていることは全然おかしいことではない。今読むと、孤高の紳士が世間に迎合する話に見えてしまう。
子供たちが傘をさして楽しそうに歌っていても、やはりおじさんには「動ゼズ驚カズ」の精神で傘をささない道を貫いて欲しかった。とはいうものの、この本の対象年齢の子供にこの境地を理解するのは難しいだろう。これは世間への迎合ではなく、新たなる挑戦とも読める。そう考えると、悪くない話にも思える。
これほどのお気に入りの「くろくて ほそくて、ぴかぴかひかった つえのよう」な傘を持っているおじさんがうらやましい。私はと云えば未だ理想の傘に出会えていないのだ。
《過去の記事》
16本の骨の傘
理想の傘がなかなかない
理想の傘がなかなかない理由
理想の傘を求めたその後
イギリスのメーカーの傘を注文し、これで理想の傘が手に入ると思ったら