ドクロとシャボン玉

古代ローマ時代にはすでに「人間は泡沫なり」という格言があった。それがルネサンス以降に復活し、儚さや虚しさの象徴として美術のテーマとなった。

プットー(裸の童子)がシャボン玉を吹く絵、虚しさや儚さを象徴する物を並べた静物画「ヴァニタス」に描かれたり、風俗画に変化して恋の誘いや子供の純真さを象徴するようになってゆく。その変化、様々な図像については『シャボン玉の図像学』森洋子 未來社)に詳しく書かれているが、中でもシンプルな絵で目を惹いたのがジャック・ド・ヘイン二世の「ヴァニタス」(1603)だ。

ジャック・ド・ヘイン二世「ヴァニタス」

ジャック・ド・ヘイン二世はオランダの画家、彫刻家だ。見えずらいが上のアーチに「人間界は空虚なり」(HVMANA VANA)と彫られている。「死を想え」(memento mori)を表す頭蓋骨、上には大きなシャボン玉、左には花、右には煙と虚しさを表すもの、手前には「貯めこんでもあの世には持って行けないもの」が描かれている。

この花、チューリップは16世紀中頃、トルコからヨーロッパに輸入された。それをフランスの植物学者クルシウスが初めてオランダに送り、球根の栽培に成功したのが1593年。17世紀にはファッショナブルな花として人気が高まったというから、この絵が描かれた頃には流行りモノだったのかもしれない。流行も虚しいものだ。

ヴァニタス – Wikipedia
ヴァニタス(虚栄)−静物画の寓意

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