『血とバラ』 耽美で切ない女吸血鬼譚

血とバラ

『血とバラ』ロジェ・ヴァディム監督 1960)を見た、というよりは見てみたと云った方がいい。字幕がないのできちんと把握はしていない。YouTubeの細切れの動画で見た。何となくゴシックっぽいのではなく、かなりゴシックだった。画質の悪さも怪しい雰囲気だ。DVD化してほしい。

ゴシックでは驚くべきことが起こる。ゴシックの元祖、ホレス・ウォルポール『オトラント城奇譚』では巨大な兜が落ちてくる。映画の最後に爆発が起こるのは珍しくないが、『血とバラ』では前半に爆発が起こる。後半に出てくる夢の中のシーンは今見ても独特で、夢に入っていくところも美しい。

原作は『吸血鬼カーミラ』レ・ファニュ 創元推理文庫)。以前読んだがあまり覚えていない。レ・ファニュオスカー・ワイルドブラム・ストーカーと同じくアイルランド、ダブリン出身だ。

最近、古本屋で講談社文庫の『オトラント城奇譚』を初めて見た。高めだったので買わなかったが、いい表紙だった。今なら『ゴシック名訳集成西洋伝奇物語―伝奇ノ匣〈7〉』 (学研M文庫)で読める。

《追記》
宝塚歌劇団花組で『ポーの一族』が上演されるので、耽美な吸血鬼映画『血とバラ』を思い出した。この記事を書いた当時は字幕なし、吹替えなしだったが、今は吹替え版の動画がある。

改めて見てみると情緒ある音楽、森や廃墟、温室などのロケ場所、幻想シーンの奇怪さと美しさがあり、主人公は本当に吸血鬼なのか精神異常による思い込みなのか曖昧な設定で、かなりよい吸血鬼映画だった。夜想のヴァンパイア特集の副題に「せつない吸血鬼『ポーの一族』『インタヴュー ウィズ ヴァンパイア』」とあるが、それらより前の『血とバラ』もせつない吸血鬼ですね。

(2017年12月11日)

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