『図像探偵 眼で解く推理博覧会』(荒俣宏 光文社文庫)に、ポオはオランを知らなかった説なるものが載っている。博物学の本のオランウータンの絵には幼獣や愛らしいものが多いことと、小説中では博物学者キュヴィエの本のオランウータンの説明に「異常な行動力、野蛮きわまる残忍さ」と書いてあることになっているが、実際にはそのような記述はないことから、ポオは多分キュヴィエを読まずに(あるいは注意深く読まずに)、「モルグ街の殺人」を書き上げたと荒俣宏は推理している。
では、挿絵画家たちはオランウータンを知っていたのだろうか。なんとなく猿風? どうなんだろうという絵もある。さすがに時代が下ったアーサー・ラッカムは明らかにオランウータンで、大きく描いてある。F・S・コバーンのがおっかない。
Alfred Kubin 1920
(はっきり分からなかったが多分 参照 http://catalog.hathitrust.org/Record/010561317)
私が「モルグ街の殺人」に興味持ったのは、挿絵が『キング・コング』(1933)に影響を与えたらしいからだった。上の絵のアーサー・ラッカムだけは『キング・コング』以後ということになる。
挿絵について調べていて、『キング・コング』の前年、1932年に「モルグ街の殺人」が映画化されていたことを知った。『魔人ドラキュラ』のベラ・ルゴシがマッド・サイエンティストという原作無視のものらしいが、怪しくてよい。
“GRAVEN IMAGES”はサイレント時代から60年代までのホラー、ファンタジー、SF映画のポスターがカラーで大量に載っているステキな本です。これの表紙が「モルグ街の殺人」なのですね。
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POE MUSEUM