『キング・コング』に影響を与えた猿たち

『図像探偵 眼で解く推理博覧会』荒俣宏 光文社文庫)に、ポオはオランを知らなかった説なるものが載っている。博物学の本のオランウータンの絵には幼獣や愛らしいものが多いことと、小説中では博物学者キュヴィエの本のオランウータンの説明に「異常な行動力、野蛮きわまる残忍さ」と書いてあることになっているが、実際にはそのような記述はないことから、ポオは多分キュヴィエを読まずに(あるいは注意深く読まずに)、「モルグ街の殺人」を書き上げたと荒俣宏は推理している。

では、挿絵画家たちはオランウータンを知っていたのだろうか。なんとなく猿風? どうなんだろうという絵もある。さすがに時代が下ったアーサー・ラッカムは明らかにオランウータンで、大きく描いてある。F・S・コバーンのがおっかない。

Daniel Urrabieta Vierge 1870Daniel Urrabieta Vierge 1870

1895Aubrey_Beardsley_-_Edgar_Poe_1Aubrey Beardsley 1895

Frederick Simpson Coburn 1902Frederick Simpson Coburn 1902

Alberto Martini - Edgar Allan Poe Alberto Martini 1905-1909

Alfred KubinAlfred Kubin 1920
(はっきり分からなかったが多分 参照 http://catalog.hathitrust.org/Record/010561317)

Harry Clarke1923Harry Clarke 1923

Arthur RackhanArthur Rackham 1935

私が「モルグ街の殺人」に興味持ったのは、挿絵が『キング・コング』(1933)に影響を与えたらしいからだった。上の絵のアーサー・ラッカムだけは『キング・コング』以後ということになる。

挿絵について調べていて、『キング・コング』の前年、1932年に「モルグ街の殺人」が映画化されていたことを知った。『魔人ドラキュラ』ベラ・ルゴシがマッド・サイエンティストという原作無視のものらしいが、怪しくてよい。

Murders-in-The-Rue-Morgue

“GRAVEN IMAGES”はサイレント時代から60年代までのホラー、ファンタジー、SF映画のポスターがカラーで大量に載っているステキな本です。これの表紙が「モルグ街の殺人」なのですね。

ポー博物館のサイト
POE MUSEUM

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