「モテたければ外見をよくしろ」と書いてある『星の王子さま』関連本

星の王子さま ちいさな王子 サン=テグジュペリ petit-prince

『もてる! 『星の王子さま』効果』晴香葉子 講談社+α新書)のタイトルを見て、またくだらない本が出ているなと思った。だが、サン=テグジュペリは実際モテたので、もしかしたら何かいいことが書いてあるかもしれないと思い、図書館で借りた。読んでみたら毒にも薬にもならないくだらない本だった。Amazonのレビューの☆1の感想がその通りだ。『星の王子さま』は子供や子供の本でも理解できる大人に向けて描かれた本なのに、有名な書名を利用してビジネスマン向けに一丁金儲けしてやろうという魂胆が気に喰わない。

引用文は問題のある内藤濯の訳だ。「あんたが、あんたのバラをとてもたいせつに思ってるのはね、そのバラの花のために、ひまつぶししたからだよ」が何度も引用されているが、これで意味が解る人がいるだろうか。ここは私も大好きな部分なのだが、この訳ではまったく意味不明だ。この部分については過去の記事「時間を無駄にする」に書いた。

外見が魅力的でジムで鍛えている人の収入が高い、笑顔の人が魅力的などという記述を読んでも何の役にも立たない。金のかからない鍛え方、どの部位を鍛えるべきなのかを書いてある本を読むべきだ。私のように普段笑わない人は、表情筋の訓練をしなくては一朝一夕に笑顔になれるものではない。そういうことを書いてある本はあるので、モテたい人はそれらを探して読んでください。

サン=テグジュペリは美男ではないのにモテた。そのヒントは「時間を無駄にする」にあると、私は思う。『もてる! 『星の王子さま』効果』には「魅力的な人として存在するためには、外見の魅力も重要ですね」とある。一般論としては間違っていない。だが、ものをよく見るには目ではなく心で見なくてはならないと書いてある『星の王子さま』と結びつけるのは、『星の王子さま』への冒瀆と云ってよい。

関連本を買うなら、『サン=テグジュペリ伝説の愛』アラン・ヴィルコンドレ 岩波書店)がいい。写真や手紙がたくさん載っている。サン=テグジュペリが戦争に行くときの妻とのやりとりに感動した。妻は薔薇のモデルでもある。サン=テグジュペリは妻に、帰ってきたら薔薇を主人公にして続きを書くよと云っていたのだ。だが行方不明になってしまった。

《関連記事》
孤独と不思議

《追記》
あまり攻撃的なことを書くべきではないのではないかとも思ったが、やはり駄目なものは駄目と書かなくてはならない。
(2015年6月10日)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。