『キング・コング』に興味持つ前から珍妙な映画は好きなので、フランク・アグラマ監督の『クイーン・コング』(1976)は過去に何度か見ていた。改めて見てみると、オリジナルの要素を色濃く受け継いでいることが分かった。コングが女であるだけではなく、人間も男女比が逆なのだ。しかも、あのエンディングは『キングコング2』の先を行っている。
それでいてパロディでコメディで笑える。最初の台詞は、ジャングルを走っているカマっぽい男が転んで「あぁんコケたぁ」だ。フェミニズムのメッセージが含まれているのだが、ふざけた映画なのでどこまで本気なのかよく分からない。私は普段は字幕派だが、この映画の広川太一郎、小原乃梨子の吹替は素晴らしく笑える。
季刊映画宝庫創刊号キング・コング特集(1977)の「これが「クィーン・コング」だ!!」によると、快調に撮影が行われていて、そろそろ公開されてもよさそうなのだが、イギリスでもイタリアでも公開されたという話がないので、もしかしたらリメイク『キングコング』(1976)のプロデューサー、ラウレンティスと裁判になって、公開が延びているのかもしれないとある。これが、『クイーン・コング』を発見して買い付けた江戸木純によると、結局まったく公開されなかったらしい。
パロディなのだから笑い話で済みそうなものなのに、ラウレンティスの神経にさわるらしく、本気で怒っていたようだ。『クイーン・コング』の宣伝では『キングコング』(1976)よりはるかに面白かったからと書かれていたが、見比べてみると確かにその通りだ。
ラウレンティスのインタビューが先の雑誌に載っていて、怒り具合が面白い。ポスターが、こんなシーンはないという大袈裟なところまで似ているのに。
そこで話がたまたま、アメリカに来る前に廻ったイギリスで奇しくも偶然、撮影を見た「クィーンコング」という、「キングコング」パロディ版の映画のことに及ぶと、ラウレンティスの顔が急に緊張した。
「あの映画の撮影は、法的に既に中断させたはずなのに、まだ製作をつづけているとは、不思議なことだ」と、すぐに電話に手がのびて、社内のどこかのセクションを呼び出して、厳しい声で調査を指示する。そして、「そのフィルムが、興行市場に現れることは、決してないだろう、決して」と、戦闘的に断言した。
それが日本に現れたのだから、映画の内容だけではなく、映画史的にも面白い。
クイーン・コング強すぎます! 映像、衣装、メイクがレトロで可愛かったです。ファッションの参考にしたいな。オシャレな女の子必見です!
・・・乙葉(タレント)