『間諜X27』 変身する女スパイ マルレーネ・ディートリッヒ

間諜X27 マルレーネ・ディートリッヒ

『間諜X27』(1931)はアメリカ映画だが、監督のジョセフ・フォン・スタンバーグはオーストリア出身、主演のマルレーネ・ディートリッヒはドイツ出身で、セットや音楽に第一次大戦中のウィーンの退廃的、虚無的な雰囲気がある。勿論、ディートリッヒ本人にも。

ディートリッヒの役は娼婦にして間諜、ピアノも弾く。妖艶な娼婦から地味なメイドに変装する。髪型と化粧でかなり変わるものだ。

久世光彦『花迷宮』(新潮文庫)で、「「モロッコ」も「嘆きの天使」も「上海特急」も、第一次大戦と第二次大戦の谷間という不安の時代の中でしか生まれなかった物憂く悦楽的な映画」と書いている。戦争は嫌なものだが、間諜の滅びの美学に魅力があることは認めないわけにはいかない。

最後のシーン、兵士の叫びは要らないような気がしたが、あれがあったから口紅とストッキングを直す時間ができた。

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