『猫の航海日誌』 寺山修司

猫の航海日誌 寺山修司

寺山修司の本でタイトルが『猫の航海日誌』(新書館)だなんて、古本屋で見かけたら絶対に気になるはずなのに知らなかったのは、多分一度も実物を見たことがなかったのだろう。この本を知ったのはペーパームーン「ヴィスコンティ ルードウィッヒ・神々の黄昏」(新書館)に載っていた記事「ニューヨークの寺山修司」の後ろの本の紹介でだった。「猫たちと少女娼婦と自動人形が書物の海を大航海する」、「文字と文字の間から小指の妖精がとび出してくるような不思議本」とあり、欲しくなった。

上記のような物語があるわけではなく、猫、盲目の少女娼婦、マザーグースなどにまつわる詩、「長靴をはいた猫」やホフマンなどについてのエッセイが収録されている。それを「猫たちと少女娼婦と自動人形が書物の海を大航海する」と表現した人はうまいことを考えたものだ。風変わりな挿絵や写真、あまり見かけない縦長の活字でいい雰囲気の本だ。全体的には眼球のイメージがある。こういう感じは今でも好きな人が多いので売れそうだが品切れで、結構高値になっている。少女娼婦の話がかなり背徳的だからか。私は比較的安めのを狙って買ったが、高めの新刊ハードカバーくらいはした。これは買ってよかった。

ホフマンについて書いているのが、人形アニメ『くるみ割り人形』の作詞をしたこととつながる。物語についてのエッセイには『ぼくが狼だった頃』(文春文庫)もある。

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