『恋愛三昧』(マックス・オフュルス監督 1933)は日本でソフト化されていないが、本や雑誌やDVDのブックレットに記載を見かける。夜想8「亡命者たちのハリウッド」収録の「オフュルスの二都物語――マックス・オフュルスのアメリカ時代」(梅本洋一)にそりで疾走する男女の写真が載っていて、どんな映画だろうと想像力をかきたてられた。『映画だけしか頭になかった』(植草甚一 晶文社)には近い年代に作られた『たそがれの維納』(ヴィリ・フォルスト監督 1934)よりもウィーン情緒が出ていることで有名だったと書かれている。
ドイツで撮った『恋愛三昧』、原題”Liebelei”は大ヒットしたが、ナチスが政権を取り、ユダヤ人への迫害が始まったのでマックス・オフュルスはパリに亡命、同年に追加撮影した場面を入れたフランス語版”Une histoire d’amour”を作った。
古い映画なので、どこかに動画がないか探してみたらあった。ただし日本語字幕はない。まずはどんな話なのかを掴むためにリメイク版『恋ひとすじに』(ピエール・ガスパール=ユイ監督 1958)見た。悪くはないが凡庸な映画だった。撮影はマックス・オフュルスと何度も組んでいるクリスチャン・マトラだが、監督が違うと撮り方も違うのだろう。それほど面白い映像はなかった。軍服でピリッとしながらもどこか抜けたところのあるアラン・ドロンの美しさとロミー・シュナイダーのまだ美女ではない垢抜けない可憐さ、街並みや室内がカラーで見られる。1933年のオリジナルはロミー・シュナイダーの母マグダ・シュナイダーが同じ役を演じている。
シュニッツレル(シュニッツラー)の原作『恋愛三昧』(森鴎外訳 岩波文庫)も読んだ。さすがに終盤の長台詞は文字で読んでも迫力あるが、かなり限られた部分しか描かれてなく、映画は色々と余白を埋めていることに気付いた。
リメイク版、原作ともに登場人物、人物同士の関係を掴むことに役立った。マックス・オフュルス監督の映画なら多分映像が美しく、言葉が全然解らなくても楽しめるだろうと思い、見てみた。
この解説が詳しくて分かりやすい。
恋愛三昧 – アテネ・フランセ文化センター
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悲劇が待つとも知らず、束の間の楽しいひととき。
雪景色に馬そり! なんと美しいことよ!
オペラ劇場、夜の街、暗いアパートメントの階段、雪の森、カフェーでワルツ等など、いいねー、これぞウィーン情緒! 行ったことないけど。DVD化して欲しい!
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