『天国に結ぶ戀』 大越孝太郎 男女のシャム双生児の流転

『天国に結ぶ戀』大越孝太郎

『天国に結ぶ戀』大越孝太郎 青林堂)を読んだ。大正末期から昭和初期が舞台で絵がきれいなので興味惹かれた。現実にはありえない男女のシャム双生児の流転が描かれる。このアイデアを思いついて形にしたことの勝利だろう。双子の少年がアコーディオンを、少女がヴァイオリンを弾いている絵、二人がタップダンスを踊っている絵がかわいい。少女の変化に少年が戸惑うところがいい。

ランプ少女とかエビ型の指とかピンヘッドが出てきて、これいいの?という登場人物の外見だが、話自体はまっとうで、頽廃的でも背徳的でもない。もっとブッ飛んでいるのかと思ったが、普通過ぎるくらいだった。これで終わりでもいいような気もするが、続きがあればより大人っぽくなるだろうから、読みたい気もする。

《追記》
記事「日本幻想文学誌コンプリ」に書いた異端文学マニュアル 日本幻想文学誌⑥昭和篇を眺めていたら江戸川乱歩『パノラマ島奇譚』を読みたくなり、読んだ。その結末部分を読んだ瞬間、昔観てずっと忘れていた『恐怖奇形人間』石井輝男監督 1969)の記憶が甦り、再度見てみた。すると、男女のシャム双生児が出てきた。『恐怖奇形人間』は原作『パノラマ島奇譚』だが、副題に江戸川乱歩全集とあり、色々混じっている。調べてみると男女のシャム双生児が出てくるのは『孤島の鬼』だ。『天国に結ぶ戀』を読んだ当時は知らなかったが、これが元ネタだったのだ。『天国に結ぶ戀』を再読したが、感想は上記と変わらない。変態度が足りない。『孤島の鬼』は結構長いが先ほど読み終わった。『パノラマ島奇譚』『孤島の鬼』も全然古くさくなく、面白いし狂っていてエロ・グロ・ナンセンスで、やっぱり江戸川乱歩は凄い。(2018年9月9日)

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