『大魔術師Xのダブル・トリック』(イー・トンシン監督 2011)というタイトルを見ただけで、『幻影師アイゼンハイム』、『プレステージ』、『奇術師フーディーニ 妖しき幻想』などの奇術師映画の系譜だろう、これは見たいと思い、見てみたら大当たりだった。主人公とライバルが敵対するだけではなく、笑いを誘う奇妙な関係だ。ヒロインはどちらの男性を選ぶのか、最後まで予想できない。レトロな雰囲気に浸ることができ、嘘、誤解、勘違いの面白さがある。
映画のストーリー
民国時代1920年頃の北京、天橋。街では軍閥の雷大牛(ラウ・チンワン)が勢力とその覇権を轟かしていた。雷は世間の人々から恐れられていたが、実生活では愛を受け入れてくれない第七夫人の柳蔭(ジョウ・シュン)に翻弄される日々を送っていた。そんな中、街に一人の天才的マジシャン張賢(トニー・レオン)が現れ、見事なマジックで人々を魅了し続けていた。雷もそのマジックに感銘し、ある日張賢を屋敷へ招き入れる。だがそれは張賢の仕組んだ計画であった。実は彼の目的は、幽閉された師匠(チョン・プイ)と再会し、張賢の元恋人である柳蔭を奪い返すことだったのだ。張賢は軍閥転覆を狙う革命団と手を組み、周到な計画を立てるが、その背後では勢力を争う軍閥たち、清朝復活を目論む残党、マジックの奥義“七聖法”を狙う者、そして謎の日本人組織が絡み、事態は思いがけぬ方向へと展開していく……。
(引用元 MovieWalker)
この映画についての予備知識は全然なかったのだが、かなり豪華なセットや衣裳、個性的な人々に引き込まれた。舞台となっている天橋は、私がこれまでに興味持ってきた昔の浅草、上海に通づる猥雑さがあり、魅力的だ。
天橋についての外部記事
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《老北京天桥众生相》(赵俊生)
謎の日本人組織は黒鷹会という。黒竜会がモデルだろう。この手の中国映画では川島芳子をモデルにした男装の女性が出てくるのは珍しくないが、この映画では日本女性は全員、黒燕尾にトップハットというのは斬新だった。日本人組織は裏で武器を流すが、表向きは中国と合同で映画会社を作っていて、映画撮影の場面があるところがよい。
私は『大魔術師Xのダブル・トリック』をかなり気に入ったのだが、惜しいのは、重要なシーンでスクリーンからある物が出てくるところがいかにもCGだったところだ。現代の映画なのだから奇術シーンにCGを使うのは問題ないが、あのシーンはスクリーンを突き破って本物が出てきたら強烈で面白いのに。