『十二夜』 生き別れになった双子の妹が男装したら兄そっくり

十二夜 twelfth-night-movie-poster-1996
十二夜とは、12月25日から12日目、一連のクリスマス祝いの最終日にあたる1月6日の顕現祭のことで、キリスト教国では古くからの陽気なお祭り騒ぎだそうだ。シェイクスピアの戯曲の映画化、トレヴァー・ナン監督の『十二夜』は好きな映画でVHSで何度か見たが、最近初めてDVDで見た。

『十二夜』は男女の双子が生き別れとなり、女の方は男装する。周りは男装した女を男性だと思い、双子を同一人物だと思うことで巻き起こる混乱が面白い。映画は戯曲そのままではなく、分かりやすくなっている。 男装のセザリオ役イモジェン・スタッブスはスラッとした輪郭でとてもかっこいい。だが、批評集によると少女の設定なのかもしれない。そのように想像して戯曲を読むのも一興だ。他の役も皆、いい表情をしている。

福田恆存の解題によると『十二夜』は「自己欺瞞」の喜劇だとのことだ。本当の愛情なら結末でコロッと変わることはありえないと。それも分からなくはないが、映画では皆、本当に恋焦がれている演技で、ストレートに感情が出ていて、結末は感動的だ。

台詞を読んで好きなように想像するには戯曲がいいが、歌を想像するのは難しい。映画版の監督はミュージカル『CATS』の演出もしただけあって歌のシーンや音楽の使い方がいい。

ただ「マルヴォーリオ騙し」はお祭り騒ぎの一環かもしれないが、少々やりすぎな気がして楽しめない。やった方は復讐されても仕方ない。

『十二夜』では顕現祭に直接触れてはいないのだが、ギリシア語のエピファネイアには現れ、奇跡的現象という意味が、英語のEpiphanyには事件や人物の本質が露呈する瞬間を象徴的に描く手法という文学的用法があるので、ぴったりな題名と云える。

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