『ラヴ・パレード』 トーキー初期のしゃれたオペレッタ

ラヴ・パレード エルンスト・ルビッチ モーリス・シュヴァリエ

16世紀イタリアで生まれたオペラはアンハッピーエンド、ハッピーエンドのオペレッタは19世紀フランスで生まれた。これがアメリカでミュージカルになってゆく、丁度その過渡期のオペレッタ映画、エルンスト・ルビッチ監督の『ラヴ・パレード』(1929)はフランスの戯曲、フランス人モーリス・シュヴァリエ主演、監督はドイツ人のアメリカ映画という、コスモポリタンな映画だ。

架空の国の独身の女王と遊び人の伯爵の恋のやりとりの他愛のない話だ。このジャネット・マクドナルド演ずる女王が女王というより、パーマのショート・カット、体のラインの出たワンピース、長い真珠の首飾り、煙草をふかすというフラッパーな感じだ。かわいらしさや威厳もある。シュヴァリエの伯爵は美男ではないが、笑顔と軽妙さがある。この時代のパラマウント映画は群を抜いて都会的だったこと、観客は俳優女優のファッションや立居振舞を真似していたことを知ってから見ると、それも納得の内容だった。

1930年代、不景気の憂さ晴らしのようにミュージカルは派手になってゆくが、『ラヴ・パレード』はそこまでは行っていない、こざっぱりした映画だ。だが、宮廷が舞台だけあって、セットや衣装、アクセサリーは豪華だ。今見ても、従者の体を張ったギャグやシュヴァリエの細かい動きや表情など、笑える。

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