ジャック・ベッケル監督、ジェラール・フィリップ主演の『モンパルナスの灯』(1958)は主にパリで活動したイタリア人画家モディリアーニの伝記映画だ。見ていて、これはモンマルトルなのではないかと思ったが、最初モンマルトルに住み、モンパルナスに移ったらしい。
くされ縁の女、新しい恋人、親友、死神的な画商など、登場人物がみな魅力的で(嫌な人物さえも)、見る見られるの視線の演出がいい。ラストのすれ違った会話が哀しい。
飲んだくれで貧乏だが、辻バイオリン弾きに金をあげたり女に花を買ったりし、金持ちにも媚びないところがかっこいい。
モディリアーニのように貧乏でぼろぼろの健康状態でも燃え上がるような恋をして早死にすることもあるかもしれない。ヘンリー・ダーガーのように全く世間と隔絶した生活で長生きして長大な物語を残す者もいる。なるようにしかならない中を藻掻き続けるしかない。