『ティコ・ムーン』(エンキ・ビラル監督 1997)を久しぶりに見た。最初はよく分からない映画だと思ったが、好きか嫌いかと云えば好きだ。上は前売券の半券で、パンフレットも内容やヴィジュアルがいい。
『ティコ・ムーン』は『ブレードランナー』(リドリー・スコット監督 1982)の影響を受けていて、『ブレードランナー』もエンキ・ビラルのBD(フランス語圏のフルカラー・コミック)の影響を受けているそうだ。日本語とか老けた25歳とか機械にくっついたジャバラなど共通点があるが、『ティコ・ムーン』のヴィジュアルは『ブレードランナー』の真似ではなくオリジナリティがある。実際、フランスは乾燥しているのだが、その感じが映画の雰囲気にもある。荒廃した未来とかかっこいい機械とかはやはり好きだ。反体制と色恋がフランス的だ。貴族がゴタゴタしているのは世界共通か。
ただ脚本が惜しい。『ブレードランナー』 は未来のヴィジュアルだけではなく、生きたいという根源的な感情や時間、記憶などについて時に静かに時に激しく描いていて、恋愛描写もいい。『ティコ・ムーン』ももっと内容がよければ、変な言葉だがメジャーなカルト・ムービーになったかもしれない。