『たそがれの女心』(マックス・オフュルス監督 1953)はダニエル・ダリュー演じるマダムが浪費癖による負債のため、夫からの贈り物であるハート型のダイヤのイヤリングを売りに出し、夫には失くしたと嘘を吐くことから事件が始まる。そのダイヤがひょんなことからまた戻ってきたり、また出て行ったりとコメディっぽく話は進むが、マダムと外交官との恋から夫と外交官の決闘へ、そして最後は「あらあら」という感じだ。決闘の結果ははっきりと描かないところが映画的で面白い。夫はシャルル・ボワイエ、外交官はヴィットリオ・デ・シーカが演じている。
サラ・ベルナールを見に行くという台詞があるので19世紀末のパリだろうか。流れるようなカメラワークで追うオペラ劇場の内部、優雅にワルツを踊りながらの会話シーンのオーバーラップ、靄にかすんだ夜の駅での別れ、汽車の窓から舞う破いた手紙から雪景色の映像へ変わるところなど、内容はたいしたことないが、映像は素晴らしい。マックス・オフュルスの映画によく見られる階段は、この映画でもよく出てくる。
この映像も綺麗だな。日本版DVDはもやっとした映像だった。
Max Ophuls – Madame de … (1953) Los pendientes from Mifune 20 on Vimeo.
マックス・オフュルスは女を撮り続けたと云われるが、云い換えれば女の愚かさだ。『たそがれの女心』のマダムも自分が嘘吐きで軽率だから不幸になったと自覚している。ただ見た目は美しく、男に期待を持たせる名人と来ている。この女の末路は自業自得だとしても、恋で盲目となり巻添えを喰らった男にとっては災難だ。
女は嘘吐きで自分勝手で本当にどうしようもない存在だが、実際に目の前にすると、ああ、やっぱりかわいいなと思ってしまうものなので、ハマり過ぎないように気を付けましょう! 女ばかり悪く書くのもかわいそうなので書いておくと、男は単純な馬鹿ばかりだ。所詮、狐と狸の化かし合いよ。
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