『ニーベルンゲンの指環』(リヒャルト・ワーグナー作 アーサー・ラッカム絵 新書館)四巻セットには挿絵が多い。ラッカムの絵は曲線が綺麗だ。「ラインの黄金」のみ寺山修司訳で、これを訳してすぐ亡くなり、「ワルキューレ」、「ジークフリート」、「神々の黄昏」は高橋康也・高橋迪が引き継いだ。寺山修司はこれをペーパー・オペラと呼ぶ。
実際のオペラは四晩かけて上演されるが、私も一日一冊ずつ読んだ。読むのは早い方ではないが、改行が多いので読めた。 神々も英雄も人間的で、悩みや弱さを持っている。悪役もどこか憎めない。三代にわたる壮大な物語だ。
スター・ウォーズは神話を研究して作られているので、指環の影響もあるかもしれない。ヴォータンとジークフリートの対決はダース・ベイダーとルークのようだった。 オペラだけあって、盛り上がるところはとても盛り上がる。アーサー・ラッカムの絵もその手助けになっている。
「ラインの黄金」
指環を手に入れるため神族、巨人族、こびと族が策略をめぐらす。知の神エルダは呪われた指環を捨てよと忠告するが、指環を手に入れた大神ヴォータンは手放したくない。どうするのか。
「ワルキューレ」
ジークフリートの出生について語られる。ジークムントとフンディングが争っている。ヴォータンはフンディングを勝たせるよう、ワルキューレに命令する。ワルキューレの一人ブリュンヒルデはジークムントの話を聞き、迷いが生じる。どちらの味方をするのか。私はここ好きだね。戦闘美少女の系譜はすでにあったのだね。
「ジークフリート」
ここは愛について。怖れるものはなにもなく、一直線につっ走るジークフリートが、眠れる乙女ブリュンヒルデに怖れを感じる。ブリュンヒルデは眠っている間は歳をとらなかったのかどうか知らないが、ジークフリートよりかなり歳上のはずだ。パドメとアナキンよりも離れているだろう。
「神々の黄昏」
ここは四角関係のもつれだ。惚れ薬が出てくるところが神話だが、誤解やああしておけばこうはならなかったのにということなどは実際にありそうなことだ。