『ボーイフレンド』(ケン・ラッセル監督)は1920年代なのか1930年代なのか

1975年発行の婦人画報創刊70周年記念 ファッションと風俗の70年に映画のレトロ・モードについて書かれている。『俺たちに明日はない』アーサー・ペン監督 1967)を契機としてか、70年代に入ると突然のように1920年代、1930年代に逆行し始めたそうだ。『デリンジャー』ジョン・ミリアス監督 1973)、『華麗なるギャツビー』ジャック・クレイトン監督 1974)、『チャイナタウン』ロマン・ポランスキー監督 1974)、『ファニー・レディー』ハーバート・ロス監督 1975)等など枚挙に暇がなく、現代モードの頂点であった20年代、30年代へのノスタルジィはまだまだ尽きそうにないとのこと。『ボーイフレンド』ケン・ラッセル監督 1971)もこの流れの中のひとつだろう。

こちらの町山智浩の解説で映画『ボーイフレンド』は1920年代に舞台化された設定だと云っているが、私は1930年代だと思っていた。

映画の中の現実世界の舞台上で演じられるミュージカル、人物の妄想シーンがあり、それ以外に舞台上ではなく映画の中の現実世界で突然歌い出すところがある。ツイッギー演ずるポリーが憧れのスターを想う心情が描かれるが、そこで使われるのが1930年代の歌であり、『四十二番街』『フットライト・パレード』など1930年代の映画の影響を受けているので『ボーイフレンド』の時代設定も1930年代だと思っていたのだ。

“You Are My Lucky Star”と“All I Do is Dream of You”、どちらの歌も『雨に唄えば』スタンリー・ドーネン監督 1952)で使われている。こちらは映画がサイレントからトーキーに変わりつつある時代の話で、トーキーが広まったのは1930年代だが、登場は1920年代後半だ。“Singin’ in the Rain”は『ボーイフレンド』の台詞に出てきて、映画“The Hollywood Revue of 1929”で使われている。

『ボーイフレンド』の意地悪メイジーはルイーズ・ブルックスの髪型だ。映画出演は1920年代後半から1930年代前半。チャールストンは20年代だな。

実際にツイッギーのようなやせっぽっちが流行だったのは1920年代だ。フランス語の少年を女性形にしたガルソンヌという、少年のような髪型や服装でまとめた女性のファッションがあった。『ボーイフレンド』の舞台に出演したこともあるジュリー・アンドリュース主演の映画『モダン・ミリー』ジョージ・ロイ・ヒル監督 1967)は1920年代の話で、冒頭で断髪や胸を小さく見せるブラジャーが描かれている。

結局どうなんだろう、現代から見たら1920年代も1930年代も誤差のようなもの、深く考えなくてもいいか。あ、もしかしてこのレコードがロンドンで吹き込まれたのが1920年代で、映画の中のポーツマスで上演されたのが1930年代だったりして。

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