何もしなくてもかっこいい人はそのままでいいかもしれないが、そうでなければかっこいい人の真似をしなくてはならない。1930年代から40年代の映画がお手本になりそうだが、ジャンルによってはもっと最近の映画でもいいかもしれない。貴族、泥棒、奇術師あたり。これは映画から教訓をひねりだすということではなく、ファッションや立居振舞いについてのことだ。
自分の物を盗まれるのは嫌だが、フィクションの泥棒は魅力的だ。時代設定が1920年代から30年代の映画ばかり見ていた時期にギャングが歌い踊るミュージカル『七人の愚連隊』(1963)を見て、同じくフランク・シナトラ、ディーン・マーティン、サミー・デイヴィス・Jrが出ている『オーシャンと11人の仲間』(1960)を見た。退役軍人が戦後しばらく経って歳をとったがもう一花咲かせようと金庫泥棒する話だ。古い映画でスローペースだが、虚しさの漂うラストはよかった。
はやりものに興味はないし、つまらないらしいと評判だったので『オーシャンズ11』(2001)を見るつもりはなかった。『オーシャンと11人の仲間』を見てから興味を持ち、Amazonのレビューを見ると高い評価も低い評価もあって、他人には薦めないけれど好きだという感想もあり、見てみたいと思った。
『オーシャンと11人の仲間』では歌やラスベガスのショーがあるところがよいのだが、リメイクの『オーシャンズ11』では全くなくなっているのが残念だ。ただ、音楽はレトロな雰囲気でかっこよく、元ネタ同様のスローペースで、これは70年代風なのかと感じた。だが、音声解説によると監督の意図はさらに昔で、エレガントな古きよきロマンス、『グランド・ホテル』のような情感、1930年代から40年代のクラシック映画を意識して撮影したとのことで、なるほどそう云われてみればそんな気がする。男ばかりの団体戦で『荒野の七人』や『大脱走』の名前も挙がっていて、こちらは『オーシャンと11人の仲間』と同時期だ。
この映画に限らず、音声解説が私は好きで、ブラッド・ピットの変装用のカツラを全然用意していなくて、『オースティン・パワーズ』でマイク・マイヤーズがかぶっていたものを使ったという話には声を出して笑ってしまった。これだけでも見る価値はあった。中身はないけどかっこいい映画というのもアリだと思う。
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