記事「テレビ映画『フランケンシュタイン』(2004) 実験室に揺らめく蝋燭の炎」に書いた『フランケンシュタイン』は約一時間もカットされた短縮版で、普通に見ていてもカットのつなぎめがブツブツ途切れているのが分かるものだった。そのノーカット完全版を見た。約一時間半の前編後編に分かれている。短縮版でもフランケンシュタインの部屋のセットや廃城とか岩山や雪山とか森とか川とかのロケ場所が美しいのは分かった。ノーカット完全版でやっと話や映像が自然な流れのものが見られた。
私はフランケンシュタインものには狂気やイッちゃっている眼がある方が好きだが、この作品のフランケンシュタイン役アレック・ニューマンは貴族的というよりはイギリスの労働者風だ。真面目で誠実な感じがし、苦悩し、よく幻覚を見る。これはこれでよい。乗馬ができるところもよい。
映像特典のケヴィン・コナー監督の話によると、怪物に対して理解と同情を示すフランケンシュタイン、愛し愛されることを求める怪物として描いていて、人物対人物の対峙、対話が見ごたえがある。
ケヴィン・コナー監督はアミカス・プロを支える監督の一人として人気を誇ったらしい。アミカス・プロは1950年代から70年代にイギリスでホラー映画を制作していたハマー・プロのライバル的存在で、そのエッセンスがこの『フランケンシュタイン』にも流れているのだろう。北極へ向かう冒険家ウォルトン船長役ドナルド・サザーランドはアミカス・プロの『テラー博士の恐怖』に出演している。
派手さはないが、しっかりした作りの作品だ。
ノーカット完全版ではないものも混じっているようなので、購入前に問い合わせた方がよい。私は問い合わせた。