エドガー・アラン・ポオの「モルグ街の殺人」(1841)は推理小説の元祖と呼ばれるが、私の興味はそこではない。紳士C・オーギュスト・デュパンの生活様式が素晴らしすぎる。
デュパンは名門の出だが、余計な贅沢はできない境遇になってしまう。だが、彼の贅沢は本だけだったのだ。古色蒼然たるグロテスクな屋敷で、薄暗い怪奇趣味に合うスタイルの家具を備え付け、昼は鎧戸を下ろして二本の蝋燭を点し、夢想に耽ったり、読書や執筆や会話に熱中する。そして夜になると街路へくり出すのだ。(丸谷才一、富士川義之、小川高義、各氏の訳を参考にした)
『さかしま』(ユイスマンス 1884)に「モルグ街の殺人」は出てこないが、ポオについては触れられており、デ・ゼッサントのマニアックさにデュパンの影響が感じられるところが嬉しい。私も影響されて部屋を暗くして、あまり出歩かないようにしようか。燭台は持っている。
「モルグ街の殺人」の挿絵はオランウータンの絵が多く、デュパンが描かれているものは少ない。下は別の作品で、エドマンド・デュラックの「大鴉」の挿絵だが、夜の感じがとてもよく、好きな絵だ。
《追記》
自分がどうなりたいのかを考えて、思いついたのがこれだった。(2014年11月10日)