バズ・ラーマン監督の『華麗なるギャツビー』で、ジョージ・ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」が使われていた。そのジョージ・ガーシュウィンの音楽アドバイザー、ケイ・スウィフトのサイトでフィッツジェラルドの名前を見かけて、興味惹かれた。
ケイ・スウィフトは女性で初めてブロードウェイ・ミュージカルの作曲をした人物だ。ケイ・スウィフト作曲の“Can’t We Be Friends?”(1929)が時代の空気を完璧にとらえていたので、フィッツジェラルドの短篇“A New Leaf”(1931)に引用されることによって不朽のものとなった。
“A New Leaf”は村上春樹訳の『バビロンに帰る ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック2』に「新緑」のタイトルで収録されている。
フィル・ホフマンは21歳の学生ジュリア・ロスに気があるのだがまだ友達で、そこにフィルの友人で息をのむほどハンサムなディック・ラグランドが現れる。ジュリアはフィルに紹介しなさいよとせがむ。フィルはディックの悪評について話し、断るが結局ジュリアに押し切られる。ディックは素面のときは美貌で魅力的な立居振舞いなのだが、アル中だったのだ。ディックは酒は止めると宣言するが・・・。
ディックが禁酒して体調が悪いときに、ジュリアに歌を歌ってほしいと頼む。
「どんな歌がいいのかしら?」
「なにか悲しい歌──ブルースのようなのがいいな」
彼女はリビー・ホールマンの歌を歌い始めた。「お話はこんな具合に終わるのね」と彼女は歌った。低いソフトな声で。
曲名が出てくるわけではないので、すぐには気づかなかった。歌詞を見てみると”this is how the story ends”とある。
これを聴いて歌詞を読めば、「新緑」の印象も変わるかもしれない。