ピラネージの「牢獄」についてはゴシック関連の本によく書いてあり、版画が1、2枚載っている。『オトラント城綺譚』のホ-レス・ウォルポール、『ヴァテック』のウィリアム・ベックフォードが魅惑されたのがその理由だが、「牢獄」に惹かれた者は他にもいたようだ。
ボードレールはピラネージに、自分と相似た精神典型を見出した。テオフィル・ゴーチエは「牢獄」を背景として『ハムレット』の上演を夢想した。ポオやミュッセやマラルメがこの銅版画家の名前を口にした。ド・クインシーは実物を見たことはなかったが、コールリッジの文章から知り、描写した。
1742年、ピラネージ22歳のとき、マラリアの熱に浮かされた状態で一気に14枚を仕上げた。19年後に手を入れて二枚追加して第二版を出した。そんなにあるなら全部見てみたいと思っていたら、”THE PRISONS/LE CARCERI”という全部載っている本が出ていた。B4の大きな本で、印刷はよくないところもあったが、この値段なら買ってよかった。第二版の方がかなり闇が深くなっているのが分かる。
■参考文献
『世紀末と楽園幻想』(池内紀 白水Uブックス)