『浅草紅団』(川端康成)には1930年頃の不良少女不良少年、浮浪者や演芸、風俗が描かれている。新潮1999年6月号に取材ノートの一部が載っている。見開きの右側に新聞記事のスクラップ、左側に断片的な言葉の箇条書きで、読んだ印象もほぼノートに似て断片的な感じだ。
今も残っている言葉もあり、全然意味が分からない言葉もある。藤田嗣治、谷崎潤一郎、田谷力三、与謝野晶子など、実在の人物名が出てくるが、全然知らない人もいて、どこまでが現実でどこからがフィクションなのかよく分からない。そういう意味でも楽しめる。一度読んだが、もっと細かく読んでいきたい。
エロ・グロ・ナンセンスの時代で、猥雑、犯罪の裏には地震と不景気がある。そして、レビューの流行。『流行の神話―ファッション・映画・デザイン』(海野弘 フィルムアート社)にあった<スイート・アンド・ビター>という言葉を思い出す。それはアメリカの30年代について、不況とハリウッド黄金時代を表した言葉だが、日本の情況にも似ている。
『浅草紅団』の内容以前に、出てくる事項を少々見ていく。
浅草十二階 凌雲閣 – Wikipedia
浅草公園水族館 – Wikipedia
カジノ・フォーリー – Wikipedia
このあたりは大体聞き覚えがあった。知らなかったのは十二階が地震で折れた後、浅草唯一エレヴエタアのある見晴らし塔という地下鉄食堂だ。調べてみると詳しく書かれている方々がいて、ありがたい。
「浅草鳥瞰図」(添田唖蝉坊『唖蝉坊底流記』昭和四年)から
●川端康成「浅草紅團」を歩く
浅草遊覧 二村定一 高井ルビー