邦画を映画館で観ることはあまりないが、『今夜、ロマンス劇場で』(武内英樹監督 2018)を観てみた。映画についてのメタフィクション映画、異世界から来た人とのラヴストーリーと、私の好みの映画だ。
『カサブランカ』と『ニュー・シネマ・パラダイス』の要素が入っているところが『ラ・ラ・ランド』と共通しているが、『今夜、ロマンス劇場で』が『ラ・ラ・ランド』と逆なのは、男が恋を選び、夢は叶わないところだ。『今夜、ロマンス劇場で』とタイトルが何となく似ていて、創作に携わる男が過去の女に憧れ、会い、結局創作では成功しないという点がよく似ているのは『ある日どこかで』(ヤノット・シュワルツ監督 1980)だ。
『ある日どこかで』は名作とも呼ばれる。私はパッとしない映画だと思っているが、『今夜、ロマンス劇場で』を観たら『ある日どこかで』を見たくなって、久しぶりに見てみたら、やはりパッとしない映画だった。だが、過去の女優の写真に憧れてタイムスリップするというロマンティックな設定は大好きだし、1910年代のレトロな映像、そして女優の表情は素晴らしい。
何がパッとしないかというと、劇作家と女優という設定が重要ではないところだ。男が女と会い、別れ、男は劇作家として成功するわけではなく廃人になってしまう。女は女優として成功するのに、男とは何と脆いものよ。
『今夜、ロマンス劇場で』もよく似ていて、性交不可能な架空の存在との恋を取った結果、映画監督になる夢は叶わない。映画監督として成功するが恋は成就しなかった『ニュー・シネマ・パラダイス』パターンとどちらがいいかと云えば、まあ一概には云えない。恋は本人の意志ではないので、損得抜きにそういう結果になっても本人が幸せならいいのだろう。ステレオタイプではないおとぎ話で、悪くはなかった。
色々な映画の影響が見られるがパクりということはなく、気付くと面白く感じる。どんな映画にもいいところがあるという台詞は淀川長治の言葉だ。モノクロ映画から出てくる王女はヴィジュアルのみならずリアカーから外の風景を見るシーンや焚火のシーン、二人で色々見て回るところに『ローマの休日』の影響が見られる。『カイロの紫のバラ』、『カラー・オブ・ハート』なども入っている。最後のオチは『タイタニック』だろうか。私はああいうのに弱い。涙が流れた。
《追記》
どちらも宝塚の月組で舞台化されているという共通点があるな。この記事を書いたときは『今夜、ロマンス劇場で』はまだだったが。ミュージカルの話ができる人と観に行ったのだったなあ。もう四年も経つのか。
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