『ヴィクター・フランケンシュタイン』(ポール・マクギガン監督 2015)の制作中に公開された写真を見て、イゴールがせむしじゃないじゃないか、分かってないやつが適当な映画を作るのかなと思ったが、見てみるとそこはきちんと描かれている。予想以上に気合の入ったフランケンシュタイン映画だった。
サーカスのピエロであり医学の勉強をしている名無しのせむし男は空中ブランコ乗りの少女ローレライに恋している。ある日、ローレライは空中ブランコから落ちる。せむし男とサーカスを観に来ていたフランケンシュタインが医学の知識で瀕死のローレライを救う。その出会いから、後にイゴールの名を与えられるせむし男とフランケンシュタインの物語が始まる。
余談だが、サーカスが出てくるフラケンシュタイン映画をいえば『ブライド』(フランク・ロッダム監督 1985)がある。
やはりフランケンシュタインには狂気がなくてはいけない。眼がイッちゃってなくては駄目だ。その点、ジェームズ・マカヴォイ演ずるヴィクター・フランケンシュタインはいい感じに狂っていて、眉間のシワも素晴らしい。ただ狂っているだけではなく、そうなってしまった理由があり、悲哀もある。
ヴィクター・フランケンシュタインの父親役はテレビ映画『オペラ座の怪人』のエリック役で、『アンダーワールド』シリーズにも出演しているチャールズ・ダンスというのが嬉しい。このブログでよく触れているオペラ座の怪人、フラケンシュタイン、吸血鬼を制覇しているとは。
フランケンシュタインの部屋には本が多く、歯車のある機械類が多数あり、蝋燭が灯っていて、すごくよい。テレビ映画『フランケンシュタイン』(2004)もよかったが、それを超えたかもしれない。灰色にくすんだ街並みも物語の雰囲気に合っていてよかった。
アクション多め、怪物を造る過程が少なめだ。脳に関するエピソードはなく、怪物の体が大きい理由は説明されている。メインの人物以外にも個性的な人物が登場し、怪物よりも人間関係が多く描かれている。
メアリー・シェリーの原作通りではなくかなり改変しているはずだが、なぜか王道のフランケンシュタイン映画の風格が漂っている。ハマー・フィルムのフランケンシュタインシリーズのピーター・カッシングの気品、同じく20世紀フォックスの『ロッキー・ホラー・ショー』のフランクン・フルターの派手さ、勢いが感じられ、ヴィクター・フランケンシュタインの狂気が充分出ているので、私はかなり気に入った。
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