八月に出ていたようだが、私はつい先ほど知った。全然関係ない本について調べていて、持っている本の翻訳者の名前から出てきた情報で偶然知った。「明日買おう」ではなく、すぐに本屋に走って買ってきた。『ラスネール回想録』(平凡社ライブラリー)である。
映画『天井棧敷の人々』(マルセル・カルネ監督 1945)の登場人物、犯罪紳士のラスネールのモデル、19世紀前半のフランスに実在した詩人であり殺人者ピエール・フランソワ・ラスネールについては『悪魔のいる文学史』(澁澤龍彦)に書かれている。文中に『回想録』からの引用が多数あり、読んでみたいと思った。上の画像に写っているメモは数か月前に手帖に書いてあったものだ。興味を持って調べたが当時は邦訳は出てなかったので、読む機会はないだろうと思っていた。それがいつの間にか出ていたので驚いた。
澁澤龍彦が書くところによると、ラスネールはロマン主義の反抗とダンディズムの理想を絵に書いたような正真正銘の犯罪紳士で、力強い詩人にも辛辣な批評家にも、憂鬱な書斎的ニヒリズムの化けものたる小説家にもなれず、そのかわり、ダンディーとして名を残した。「人間情念の一大ドキュメントとして、汲めども尽きぬ興趣にみちているといえよう。べつだん、犯罪の描写があるから面白いのではなく、いかにして自分が犯罪者になったかという、魂の記録に重点が置かれているから面白いのである」と書かれているのを読むと、回想録を読んでみたくなるというものだ。