フィッツジェラルドに感銘を受け、クラシック映画も好きなので『ラスト・タイクーン』は是非読まねばと思い、ハヤカワ文庫の乾信一郎訳と三笠書房の米田敏範訳を読み、角川文庫大貫三郎訳は時々参照した。
恋愛描写や映画ネタで面白いところもあるのだが、執筆途中でフィッツジェラルドは亡くなったので、未完で練られた作品ではないせいか、どうもピンと来ない。色々と偶然に頼りすぎな気がする。『グレート・ギャツビー』(1925)は頑張ればなんとかなると思っている人物の話だが、それから色々あって、『ラスト・タイクーン』(1940)になると、もう頑張ってもどうにもならないという感じだろうか。完成したものを読みたかった。
検索しても感想はあまり見つからない。代表作ではなく、手に入りやすいのは角川文庫だけで、定評のある訳というものが存在しない。ペーパーバックが安かったので注文してしまった。
孫引きになるが、フィッツジェラルドが『ラスト・タイクーン』のアイデアを得たのは、ハリウッドでジョージ・ガーシュウィンの“Nice Work If You Can Get It”を聴いたかららしい(参照 ガーシュインやスタンダード・ソングのことなど・・・ – INTERLUDE by 寺井珠重)。
この曲は私も昔から大好きで、嬉しい発見だった。『ラスト・タイクーン』より前に書かれた作品にも“Nice Work If You Can Get It”的なところはあるので、多分聴いて思いついたというよりは、フィッツジェラルドもこの曲を好きになる感性の持ち主だったのではないだろうか。